遺失物
娘の健康保険証を失くした。財布に入っていると思っていたのに、病院の受診時に、無いことに気がついた。家にある可能性が高いと心あたりを探したけれど、見つからず。気付いた日の夕方、交番に届けた。
交番に行ったのは、夫が怖くて逃げ込んだ7年前以来だと思う。
コロナ禍のこんな時期でもあるし、どこの誰に娘の名義(扶養する私のフルネームも載っているので私の名義含めて)を使用されるかわからないという不安によるストレスで、久々に元夫と裁判の決着がつくまでの、不安に怯えていた日々を、交番に入ったこともきっかけとなり、思い出した。
自分の一部が欠損しているような感覚だ。相手方の姓のまま、娘と元夫に居場所を知られないように隠れて暮らし、あり得る最悪のケースを想像していた頃のこと。
それでも、保険証など職場に再発行してもらえば済むので、あの時ほどのストレスではない。
こんなことでもなければ思い出せない(思い出したくない)ほどに、苦しくて、出来れば忘れて生きていたい記憶。
幸い、善意の人にみつかり、警察に届けられた娘の保険証は、1週間も経たずに手元に戻ってきた。予想外のところに落としていた。
もう、大切な物はもちろん、大切な人との関係も失いたくない。失くさないよう気をつけ、大事にしていこうと思った。