格安物件と匂い
ポン・ジュノ監督の韓国映画、『パラサイト 半地下の家族』を観た。
豪邸に住む富裕層の一家と、半地下の住人である一家の格差が描かれた映画だ。
能力的には、もしかしたら半地下の住人と富裕層の一家はそれほど変わりないのではないかと思う。半地下の一家は、急に与えられた、運転手、家庭教師、家政婦などの役割を、器用にこなすが、そうそう簡単にできることではないと思う。半地下の住人にあまりに簡単に騙される富裕層の一家の方が愚かに見える。
半地下の住人と富裕層一家の住人の決定的な違いは、匂いだ。
これは、格安物件を移り住んできた私にはすごくよくわかる。私は、半地下の匂いを発していたかもしれないし、もしかしたら今現在も発しているかもしれない。
日本に、韓国のような半地下の文化はないけれど、低所得者の放つ匂いは国を超えて似たようなものかもしれない。
日本で格安物件を借りると、例えば風呂無し、ベランダなし、日当たりが悪かったり、窓が少なく風通しの悪いワンルームを借りるパターンとなる。キッチンと居住スペースを隔てる扉がなければ、食べ物の匂いがカーテンやカーペットなどに毎日染み込む。洗濯物を干すことができるベランダはなく、当然場所をとり高価な乾燥機付き洗濯機をおけるわけもなく、洗濯物を室内に干す。部屋は湿度が高まり、生乾きの洗濯物は異臭を放つ。除湿機を置けるスペースもなく、、、。
本人が怠惰であるとか、不潔であるとかではなく、お金が無いという環境が否応なしに匂いをつける。
隙間のある家で、いくら清潔を保とうと心がけてもゴキブリなどの虫も入り込む。格安物件には洗面所などないので、キッチンは洗面所も兼ねる。
私が格安物件に住んでいた頃、私は毎日スーツを着て、ビジネスマナーなどを教える立場にあった。その私のスーツに染み込んだ匂いに、消臭剤をかけてはいたが、おそらく富裕層の上司は気付いていたかもしれない。幸いそのことで、いじめられることはなかった。もしそのことを言われたら、相当に傷ついたと思う。