Ally Bally Bee

夫のDV・モラルハラスメントから逃れて娘と二人暮らし。全ての人が生きやすい社会になることを願いつつ、今ひとり親 として出来ることをあらゆる角度から考えていきます。

金子みすゞとその死をかけた親権

モラル・ハラスメントを知るようになって、思い出したのは童謡詩人・金子みすゞのことでした。10年ほど前に一度観ている映画、五十嵐匠監督『みすゞ』を見て、やはりみすゞの夫は典型的なモラ夫だったことを確認しました。この夫のせいで、みすゞは26歳の若さで自死してしまいます。

例えばみすゞの夫はみすゞの詩作や投稿を禁じます。みすゞに稼業を任せ遊郭通いを続けます。淋病をみすゞに移します。仕事が無い身でありながら離婚後も娘を引き取りに来ると親権を主張します。

みすゞは娘ふさえを自分の母に託すことを懇願する遺書を遺し、夫がふさえを強引に連れ戻しに来る前日に服毒自殺しました。

ほとんど自分の手ひとつで子どもを育てているのに、モラ夫に親権を主張される苦しみは私も味わっているだけによくわかります。モラ夫のもとに渡るくらいなら、顏も知らない善意の人に育てられる方がどんなにましか知れません。死と引き換えにモラ夫の手に子どもが渡されず、自分の信頼できる人に育ててもらえるならと、みすゞがあの時代、淋病を患った身体で死を選んだ気持ちは理解できます。

私にとって死をかけても大事なわが子を守るため親権を譲りたくない相手が、人として信じられない相手が、DV・モラ夫です。DV・モラ夫に限って、養育費も払わずに親権を主張し、別居後も離婚後も更なる苦しみを加え続けるのです。

映画の中で印象的だったのは、夫のことを「あいつもそんな悪いやつじゃねえ」と言われて「けっこう悪い人ですよ」とみすゞが返すシーンです。人前では良い人と思われていることの多いモラ夫を持つ人にはすごく共感できるセリフだと思います。他人に理解してもらえない哀しさ、モラ夫に対するあきらめを含むセリフです。ここで、強くモラ夫のことを批判し反論すると、二次被害を受けたり、自分もモラ夫と同じような下衆になった気がしてしまうのです。モラ夫のことを「そんなに悪い人ではない」と言う人に、言葉での説明はあまり意味をなさないから、「けっこう悪い人ですよ」という返しが自分自身を守るためにもおそらく適切なのです。このセリフをいれた監督のセンスに感心しました。

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