人間観察の技法
ルドルフ・シュタイナーは、子どもの気質を重視する教育のあり方をいちはやく提言した人です。気質をもとに、一人ひとりの子どもの個性を見抜き、教育に生かすという考えを持っていました。
気質は大きく「胆汁質」「粘液質」「多血質」「憂鬱質」の四つに分けられますが、どの人も四つの気質を併せ持っています。
占いのように血液型や星座で性格や運命を決めつけるものではないということです。気質を深く知ることによって自分自身のことやまわりの人の個性を知り、その個性とどのように付き合うか考える手がかりと出来るのです。
ある人とその気質は、その人の気質を馬に、人を馬にのっている騎士になぞらえるとわかりやすく、騎士が馬の手綱をしっかり握り、思い通りに走らせることができれば、その人は自分の気質をコントロールできているといえます。それぞれの気質は、大人より子どものほうがストレートに現れるので、その子の気質を注意深く観察し、気質に合わせた対応をすると、子どもも個性を十分活かすことが出来るのです。
この気質という人間の見方は、ギリシャ時代に見出されました。古代ギリシャのヒポクラテスという医師が、気質が違えば患者に現れる症状も違うことを発見したのです。彼は気質をTEMPERAMENT「混合」と名付けました。
ヒポクラテスが活躍する30年前には、医師であり哲学者でもあったエンペドクレスが四元素論を唱えています。四元素とは、火、風、水、地のことで、ヒポクラテスは四つの元素の存在を気質と結びつけました。火の要素を持つのが「胆汁質」、風の要素を持つ「多血質」、水の要素を持つ「粘液質」、地の要素を持つ「憂鬱質」です。
時を経た、18世紀、ドイツの二人の詩人、ゲーテとシラーが四つの気質と、それらの気質が混じった混合気質の特徴を話し合い、それぞれの気質にぴったりの12の職業を見つけ出します。例えば、行動力がある「胆汁質」と好奇心旺盛な「多血質」が加わった気質に適した職業は「冒険家」となります。
子どもの気質に効果的な影響を与える色もあります。「胆汁質」は赤、「多血質」は黄色、「粘液質」は緑、「憂鬱質」は青です。
穀物も気質と深いかかわりがあるようです。「粘液質」にはコメ、「多血質」にはキビ、「憂鬱質」にはとうもろこし、「胆汁質」には蕎麦。「同じものが同じものに作用する」という考え方があてはめられます。
と、この辺りの話になってくると、なんだか眉唾な感じがし、科学的な根拠を求めたくなってもきますが、ともかく、気質の考え方は、子育てにも仕事にも、あらゆる人付き合いの場において、スムーズなコミュニケーションを目指すことのできる人間観察の技法です。
ヘルムート・エラー著「4つの気質と個性のしくみ」は、図書館で借りた本ですが、手元において、何度か読みたいと思える本でした。