Ally Bally Bee

夫のDV・モラルハラスメントから逃れて娘と二人暮らし。全ての人が生きやすい社会になることを願いつつ、今ひとり親 として出来ることをあらゆる角度から考えていきます。

マーシャとくまとDV夫

ゆうがた、くまはかえってきてマーシャをみつけると、おおよろこびでいいました。
「これはありがたい。もうにがさんぞ。ここにずっとすんでもらおう。ペチカをたいたり、おかゆをにたり、わしにおかゆをたべさせたりしてもらおう」
マーシャはかなしくなってなきました。でもしかたがありません。くまのこやでくらすことにしました。
くまはいちにちじゅう、もりへでかけてるすでした。けれども、だまってそとへ行ってはいけないと、マーシャにかたくいいつけました。
「にげだしたってだめだ。すぐにつかまえてたべてやるぞ」
くまは、そういっておどかしました。
どうしたら、くまのところからにげだせるかしら。
マーシャはかんがえました。まわりはもりで、どっちへいってよいかわかりません。みちをおしえてくれるひともいません。
(E・ラチョフ絵/M・ブラトフ再話/うちだりさこ訳『マーシャとくま』)

子どもに毎晩絵本を読み聞かせています。絵本を読みながらついつい大人の視点で物語を読み解いてしまうことがあります。『マーシャとくま』を読み聞かせながら、私は上に引用した箇所を読んでドキッとしました。これはロシア民話で子どものための絵本でありながら、物語の登場人物であるくまはDV・モラハラ夫そのもので、マーシャという主人公の女の子はまるで同居時代の私だったからです。

マーシャはその後、知恵を働かせておじいさんとおばあさんの待つ家にめでたく帰り着くことになります。DV・モラハラ夫のもとから逃れるためにも知恵を働かせ、時には演技もし、細心の注意を払い行動を起こす必要があります。

マーシャとくまという物語の成り立ちは知りませんが、今以上にDVやモラハラの問題を世に訴えにくかった時代、そして今以上に男尊女卑が根強かった時代に出来たお話であることは確かかと思います。少女たちはおばあさんやお母さんからこのようなお話で教訓を得ていたのかな、いや辛い思いをした女性たちは暗喩を散りばめたお話というかたちでしか表現し訴える手段が無かったのだろうなとせつなくなりました。
かつてこの話を読んだ子ども時代の私は、もちろんくまと結婚相手を結びつけることなんてできなかったな、と虚しくも感じました

マーシャとくま―ロシア民話 (世界傑作絵本シリーズ―ロシアの絵本)

マーシャとくま―ロシア民話 (世界傑作絵本シリーズ―ロシアの絵本)