シングルとして経済的に自立するということ
先日、古い知り合いのNさん(60代)に非正規職員として子どもを育てている話をした時のこと、「まずは経済的に自立しなくてはね」と言われた。なるほど、私は誰の援助も受けずに一人で部屋を借りて育てていることを経済的な自立だと思っていたけれど、世間的にはそうは見られないのだということにはたと気付いた。話の流れ的は、「一人だから病気になれないと思っているのです」と私、おばさまが「正社員だと病気になっても休職できたり、しっかりした保障があるけれどね。まずは経済的に自立しなくてはね」という感じである。ちなみにNさんはもと公務員でかなり安定した生活を送ってきた方だ。
Nさんは、私のことを心配して言っただろうことはわかっているので嫌な気にはならなかったけれど、「まずは経済的に自立しなくてはね」という言葉に私は深く考えさせられた。経済的な自立とはたとえば収入が低いことにより減免を受けないとかそういう意味も含むのだろう。ひとり親の手当をもらうことも生活保護の枠内で頑張って生活することも自立していないことになるのだろう。フリーでやっている人で身体が資本の人も、よほど貯金が無い限り経済的に自立していることにならないのかもしれない。保障がないから。
年齢と共に収入が上がるわけではない非正規職員を長年やってきた人、あるいは主婦だった人がNさんの言うような意味で「経済的に自立」することはとても難しい。
自立という言葉の意味を調べたところ「他への従属から離れて独り立ちすること。他からの支配や助力を受けずに、存在すること」とあった。たとえば生活保護を受けた場合、国に従属しており、国からの支配や助力を受けていることになるのだとしたら、ある会社で正社員として働いた場合もその会社に従属しており、会社からの支配や助力を受けていることにはならないのだろうか。経済的に安定することは確かにシングルにとって必要なことだけれど、自立という言葉を今回のようなケースで使うのは適切なのだろうか。かつて障害者自立支援法という法律もあったけれど、当事者を無視したものであったと思う。自立って解釈が難しい言葉だと改めて思った。